日本人が初めて参加したクリスマスパーティーがいつ、どこで開かれたかご存じだろうか。記録が残っているのはキリスト教がご法度だった明治4年の1871年12月25日。パーティーは、アメリカから理科教師として福井藩に招かれて来日していたウィリアム・グリフィスが福井の自宅で開いた。グリフィスが残した記述からは、参加した日本人がケーキやコーヒーを口に運び、足袋に入れられたプレゼントを喜ぶ様子がうかがえる。2021年にグリフィス来日から150周年を迎えるのを前に、福井市グリフィス記念館（同市中央3）では、当時の様子を再現するクリスマスイベントを企画している。
グリフィスが福井に滞在していたのは1871年3月から翌年1月まで。その後は東京で教師を務め、74年に帰国した。帰国後に日本通史と滞在記をまとめた「ミカドズ・エンパイア」は世界中でベストセラーとなるなど、作家としても活躍した。グリフィスは福井について、「福井在住の1年あまりの間、絶えずあふれるばかりの親切を受けた」「最も幸福な思い出のなかに福井の人びとがいる」と「明治日本体験記」（山下英一氏訳）に残している。
「少年までが突然のクリスマス病」
グリフィスが福井で迎えたクリスマスは1度だけだったが、家族に宛てた手紙（同氏訳）に興奮した様子で書き残されている。クリスマスの意味や祝い方を学生らに伝えた24日のイブの夜、「ぼくのこの家でもクリスマスイヴを祝っている。日本の少年までが突然のクリスマス病にかかり、いま夜中の12時だが食堂は緑の枝、玩具、食べ物、足袋の飾りでにぎやかだ」とつづった。
グリフィスは自らサンタクロースを演じた。グリフィスは学生らが寝静まった後に、暖炉につるされた学生らの足袋9足に用意したドロップや鉛筆、ジャムの小瓶などプレゼントを詰め込んでいった。翌朝には「少年たちは早く起きて足袋の中身を見て喜びはしゃいだ」という。
25日には学生と教師、役人ら60～70人を招待し、クリスマスパーティーを開いた。「ほとんどの人はチョコレートを食べたこともコーヒーを飲んだこともないのでその両方をためした」と、当時は珍しかったコーヒーやケーキなどを用意してクリスマスを祝った。家の中をのぞき込んだ通行人も引っ張り込まれて参加し、「誰もがうれしく楽しく見えた」と記される。
キリスト教ご法度の時代に
当時はキリスト教を禁じる法令が書かれた「高札（たかふだ）」が町に掲示されており、ミカドズ・エンパイアにはクリスマスパーティーに来た少年が「先生の神様のおうちはどこですか」と小声で尋ねたという場面が描写されている。グリフィスを研究する福井大の細谷龍平教授（67）によると、横浜などにいた外国人の間ではクリスマスが祝われていたが、公に初めて日本人と開いたクリスマスパーティーだったという。細谷教授は「欧米のクリスマスは家族と過ごすイベント。家族のように迎えてくれた福井の人情にほれ込み、お返しがしたいとクリスマスパーティーを開いたのではないか」と話す。
当時のように地域をクリスマスイベントで盛り上げようと、細谷教授が理事長を務める「日下部・グリフィス学術・文化交流基金」は「福井で見るサンタの夢」を企画する。福井の歴史にゆかりのある偉人の似顔絵コンテストを実施。今月10日までに県内の小学生から応募があった作品の中から選ばれた25人で、12月1～25日のアドベントカレンダーを製作し、25日～来年1月11日まで福井市のグリフィス記念館に展示する。また、入賞者にはグリフィスがプレゼントを入れたような「クリスマス足袋」を贈る。中に入れるプレゼントの購入費などをクラウドファンディングで募っている。25日には市グリフィス記念館でグリフィス作の童話の朗読会とクリスマスキャロルの合唱会を催し、ユーチューブで生配信する。詳細は同基金のホームページhttp://www.kusakabegriffis.com/【横見知佳】
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December 14, 2020 at 01:33PM
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